英語の音読

手軽に一人でもできる英会話練習法の音読。音読は野球やゴルフなどのスポーツの練習にたとえると「素振り」にあたるだろう。

音読は、英語を身につける上で、非常に有効なトレーニング方法です。日本国内で英語を身につける場合、毎日英会話レッスンを受けるわけにはいかないので、やはり音読が訓練の基本になります。
「同時通訳の神様」と呼ばれた國弘 正雄氏は、自ら「自分は音読によって英語をマスターした」と語り、その著『英語の話し方』のなかで音読の重要性を説いています。

英会話の練習を野球やゴルフといったスポーツにたとえると、素振りにあたるでしょう。

「実際にボールを打つのが練習じゃないか?」と思われるかもしれませんが、素振りも大切な練習です。野球では、「世界のホームラン王、王貞治氏は素振りで作られた」と言われますが、野球選手がうまくなろうとしたら、バットの素振りは欠かせない練習です。

ゴルフというと、打ち放し練習場のイメージがありますが、実際に素振りが有効な練習方法で、毎日何100回も素振りをする選手もいるそうです。

ゴルフで実際にボールを打つと、どうしても飛ばそうという意識が先に来て、完璧なフォームでスウィングすることが難しくなるので、フォームを意識して素振りをすることが大切なのだそうです。

英会話の練習に当てはめるとどうか。ネイティブを前に英語を実際に話すと、とにかくコミュニケーションをとろうという意識が先に働き、ある程度うまくなる前の人ほど、英語の「フォーム」が崩れることがあるからです。

文字として書かれた英文を声に出して読むと、正しい例文を読んでいる限り、完璧な英語の「フォーム」を練習できます。実際の会話では、英文をそらで口からださなければなりませんが、音読だと、文法・発音・イントネーションに意識を置いたまま練習できます。

外国人と話す機会がある、あるいは海外駐在していたのに、いつまでも正確な英語が話せない、ブロークンな英語を話す人を野球にたとえると、バットの握りもフォームをメチャクチャなまま、「とにかくボールを打って前に飛ばせばいいんだろう」いう感じで打撃を続けているのに等しいと思います。たしかに英語はコミュニケーションの手段であって、意志が通じればいいのですが、海外経験が豊富なのにブロークン英語から抜け出せない人を見るたびに、ときどき「素振り」をして自分の英語を点検することで、もっとうまくなってゆくのに、と思ったりします。

また音読の効用としては、英語の思考方法を身につけられるということがあります。英語と日本語では文法、特に語順が著しく違います。それで初級・中級ぐらいの人までは、どうしても英語を頭の中で日本語にいちいち翻訳して理解するクセがあります。音読で英語を集中して読んでいる間は、英語を頭から返り読みせず英語の語順のまま頭の中で咀嚼するしかありません。その間は、英語を英語の語順で理解しているので、英語の語順・思考法を身につけることができます。これが音読がスピーキングだけでなくリスニング強化にも有効な理由です。

 

どのくらい、どうやってやれば話せるようになるか?

僕の知り合いで英語の通訳をしているある人は、徹底した音読練習をやります。「こういう言い回しを身につけたい」と思うと、その文を10回、20回でなく、最低100回は読むそうです。確かに、100回も読めば、一つの語法、文法事項を含んだ例文を暗唱できるようになるでしょう。

100回も読むと時間がかかると思われるかもしれませんが、何度も読むうちに速く読めるようになるし、また意識的に高速音読を心がけるので、時間は意外とかからない、と彼は言います。

場面別の会話にしろ、文法にしろ、テキストブックをこんな感じで読み込んで練習すれば、頭にもたたき込めるし、口も動くように間違いなくなります。読む回数は、個人個人のマスター度合い、時間の都合によると思います。これまでやってこなかった人は、とりあえず一日5分でも10分でも時間を確保して実践してみてください。

音読は英会話レッスンの復習にいいですが、実はこれを予習として行うと、自宅学習による知識のインプットと会話の基礎練習ができているので、クラスの中では、実践的な練習だけに専念できるようになります。

英会話を身につけるのには、英会話学校のプログラムのような何十時間単位ではなく、何百、何千時間の単位での練習が必要です。それを全部英会話教室で先生についてレッスンしてもらっていたのでは、時間的にも経済的にも大変です。要は、自分一人でできることは自分でやり、いかに効率よくレッスンを活用するか、というところが勝負になってくるのです。